平成18年度文化功労者

高木 聖鶴

 昨年の10月27日、平成18年度の文化勲章、文化功労者の発表がなされ、美術関係の受賞者として文化勲章に大山忠作氏(日本画家)、文化功労者に朝倉摂(舞台芸術家)、黒川紀章(建築家)、高木聖鶴(書家)の三氏の名前が挙がった。最近の書道界では2001年の成瀬映山氏、2002年の大平山涛氏に続く快挙で、かな界では今回の高木聖鶴氏への顕彰は1995年の杉岡華邨氏以来11年振りのこととなる。弊紙からも改めてお慶びを申し上げたい。
 昨年、弊紙の20周年で168名の各美術界の先生方に、御自身の言葉で制作に係る信念、今後の目標などを記していただいた単行本「美を継ぐ者たち」を発刊させていただいたが、その中、「書は生涯学習として始めました。もう60余年になります。かなの勉強は、平安の古典、中国書法をも視野にいれて、自風を開発することですが、私には良寛の自由なる独自の展開、光悦の消息文にみる明るさのある枯淡、平安かな消息にみられる自然な流れの美しさに、日本人として魅せられます」と高木聖鶴氏の書美に対する記述がある。一方、大字かなに使用する漢字については、醍醐天皇宸筆とされている白氏文集に少なからず影響を受けたと語る。白氏文集の中のほんの2〜3文字だが、天皇でなければ書けない大胆で「生」を感じる音が聞こえたのだという。昭和35年頃のことだが、以来大字はこれを軸にしていこうと決め、昭和47年の読売選抜でかな部最高賞を受賞した大字作品「いはばしる」が生まれている。
 さて、今年の現代書道二十人展から聖鶴氏の「四季の歌/古今和歌集」を紹介させて頂いた。絢爛豪華な料紙の巻子作品で、実に自然なリズムで筆が運ばれている。正に平安かな消息の優雅な流れを彷彿とさせるようで、その息遣いは終始一貫しながらも、静かに奏でるところ、大胆に展開する部位をとりこみながら全体美を見据えた作品に仕上がっている。こうした作品が書けるのも歌を殆ど覚えているからで、いちいち歌を見ながらではこうはいくまい。聖鶴氏から、こうした巻子、帖作品は3時間ほどで書き上げるとお聞きしている。人間が集中力を持続できるのが3時間ほどだから、それ以上休まずやると逆に気韻が乱れるということであろう。益々の御健筆を祈念したい。(松原)