渾身の金紙(絹)作品29点から
「富嶽詩屏風 六曲一双」


鈴木春朝 書作展


● 令和元年12月20日〜25日
● 東京・江戸川区タワーホール 船堀

 

 数年前から「個展を開くなら地元江戸川区で」「そのときは全作金紙でやる」と秘かに聞いていた。これは随分楽しみだ、どんな会場になるのかと心に留めていたが、「そのとき」があまりにも突然やってきて些か驚いたが、これも鈴木春朝らしい、江戸っ子気質なのかもしれない。
 待ち望まれた作家鈴木春朝渾身の大個展。有言通り、地元江戸川区タワーホール船堀展示室全室が全作金紙(絹・箔)を使った新作29点の大作で覆われた。圧巻である。大作の素材は全て富嶽詩。春朝のライフワークである。縱1メートル弱、横8メートル3段に及ぶ長文二作にいきなり出会う。濃墨をもろともせず、坦々と書き進められているように見えるが、そこには個展に懸けた春朝が力を振り絞って制作する姿が重なり、見る側の心はかなり揺り動かされる。そうして振り返ったとき、今度は屏風の大作群を目にすることになる。それも六曲一双の連続だ。凄まじい胆力をまざまざと見せつけられる。この中の1点を掲出した。一曲二行に濃墨の太い線が駆け巡る。渇部になっても強い筆力と気力で筆は止まらない。それは執念でもあるかのように。そしてそこに書人の高きプライドを見る。この辺りに書の奥深きものがあるように思えてならない。つまり、その時、その一瞬の隠しようのない人間の姿そのものなのではないか。見る者の心も洗われゆくのである。
 鈴木春朝は昭和11年、東京浅草生まれ。同25年、殿村藍田に師事。爾来70
年、師亡き後も常に「親父」と慕い続け、心の拠り所としてきた。今展においても「「お前もこんなことが出来るようになったか」と、師も笑ってくれるのではないかと…」と記すように、今尚強い絆で結ばれている。同30年、日展初入選。同52年、60年、日展特選。平成16年、日展会員賞。同19年から24年現代書道二十人展出品。同28年、文化庁長官表彰。現在、日展特別会員、読売書法会参事、謙慎書道会会長、采真書社代表。(篠原)