第73回新興展

 

飛澤 龍神

「水辺の秋」

 新興美術院は昭和12年、脱退した日本美術院院友12名により結成声明宣言され、翌13年4月に東京府美術館で創立第1回展が開催された。以降終戦前年の19年の7回展まで続けられたが、終戦の混乱で後の開催は中絶となり、戦後昭和26年6月に旧同志8名の強い再結束により再興第1回展が東京都美術館で開催された。戦後の絵画ブーム環境での盛況とバブル後の低成長経済が続く中での高齢化と会員減少化で厳しい現況の中、会は結成時の芸術探求心は持ち続けられており、出品数は減じたが質的には健全さを保っている。最終、芸術は個に帰するが、その環境を保持する社会システムと文化政策の未熟、無知が問題であろう。今展より注目作品13点を挙げた。
 飛澤龍神代表理事は恒例の六曲一双による「野辺の秋・水辺の秋」から、白鷺の所作とカワセミの視点効果の「水辺の秋」。藤咲億桜の物語性ある作品は本展の楽しみのひとつ。が、やや展開と構成にひと味欲しいか。一方、精緻に遠近を描き込んだ安食孫四郎「初冬月山」は今展の白眉。抜ける月山の雪景色が心地よい。そして、岩田令子「道草」に視線が止まる。白昼夢のような夏の景。上田広「初夏」、二匹の真鯉の悠然とした生命感。加藤晴美の構成力、松原秀の心象的臨場感。渓谷から一転、梅の古木を真摯に描ききった富田四郎も印象的。吉久保絢子、石岡かつ子、他も。(松)