画業50年記念 福田千惠 展
ー悠久への美を求めて−


● 6月15日〜24日
● 和光 本館6F 和光ホール

 

 武蔵野美大の日本画科在籍中の20歳のとき、故佐藤太清に師事、大学卒業の年、日春展と秋の日展に入選、画家としてデビュー。以来一度も休むことなく50年の画道を歩み続けてきた。その記念の本展には、福田が数多く手がけ、名品をものした代表的な人物画の作品を中心に、新作の数々の草花やめずらしい風景が並べられた。
 赤い袈裟をまとった「比丘尼」(1990)、黒い背景に浮かぶ白い衣装の女流「寫真家」(1995)、作務衣姿で刀を研ぐ「研磨」(2009)、小太りの調理人「ムッシュM」(2000)、くつろぐ夫妻を描いた文部大臣賞の「ながい夜」(1999)、和装の和服もあでやかな姉妹の「二枚襲」(2013)等々、懐しくも心にしっかりと刻まれた人物画の中から、初期の傑作で初の日展特選作「紫陽花とテレサ」(1981)を紹介する。
 藤製のソファーに身をゆだね、長々と脚を伸ばしてくつろぐ若い女性。じっとこちらを凝視する眼差し、波紋状の市松のロングドレス、棚に飾られた紫陽の揺るぎない構成がもつ確たる空間の中で、色彩を抑制しながらも華やぎをまとい、生命賛歌を謳いあげるしなやかで、かつ強い精神性、あるいはモデル(対象)へ向ける愛深き思いなど、その後彼女の一貫した創作の美質と持ち味が良く伺われる。画家35歳の作。
 図録は出品しきれなかった作品を登載して充実しているが、折々のスナップ作品が楽しめた。モノクロの幼少時代から、画業の道程で出会った師や仲間やモデルたちが折々に登場する。人生だから様々な事に遭遇しながら、出会いを大切にし愛し愛されて、強く明るく健気に生きてきた姿がほうふつとする。
 また挨拶文の中に、空を見上げて相変わらず自転車で転んだり、猫の瞳を一日中ずっと見ていたり、海や道行く人々を眺め、ときに大空を飛んでいたりすると。作品とスナップとことばの三位一体、より深い鑑賞となる個展だった。
(中野)

 

 

 

 

   

紫陽花とテレサ

173×217cm 1981 第13回日展 特選作品