葦 讃 歌
―葦ペンが描き出す墨線の世界―


小松 欽 展


● 11月8日〜14日
● 長野県伊那市/かんてんぱぱホール

 

 日本表現派代表・国際芸術家協会会長の小松欽が出身地である長野県伊那市で大個展を開催した。94歳の小松欽の画業が集約された大作20点を含む約50点の展観。
 小松欽といえば葦ペン画家と即応できるくらいその業績は定着しているが、葦にたどり着くまでは油彩を歩み、「絵を描かない美術教師」に明け暮れていた。その小松を開眼させたのが葦ペンである。以来、油彩を捨て、日本の海岸を描き歩いたり、スペインに三年間住み、厳しさ故の美しい風景を描きためたりと画道一本に生きてきた。そうして生まれたのが「混沌の中の秩序」と称される濃密の画面だ。掲載の「レクイエム・この林の中に」に象徴されるように、葦から描き出される無数の線が画面全体を覆い、抽象の世界を思わせる。しかしそれではないのだ。ここには林立する樹木の姿があり、ずっと凝視していると観音像が浮かび来るではないか。つまりこの作は亡き妻への鎮魂歌。実に小松欽らしいレクイエムなのである。この画風は小松欽の代名詞にもなり、次々に名作を発表することに。そして徐々に具象化が進みだし、近年では「神々の戯れ」のようによりメッセージ性の強い画面を見せることになった。そして九十代の今、小松の求めるものは瞬発の線に集約されている。最新作「春を舞う」がそれを物語る。葦から繰り出された瞬時瞬発の線は思いもよらぬ響きを呼び起こす。それが叶ったとき、絵は完結するという。だからサインも入れられなかったとも。それほど線に賭けているのだ。この先もまだまだ葦ペン画に魅了される日々が続くだろう。 (篠原)

 

 

 

 

 

 

 

レクイエム・この林の中に (2004・長野カヤの平)〈1800×2700〉

神々の戯れ(2020)〈1303×2860〉

春を舞う (2024)  〈800×700〉