第30回東京春季創画展より

 

 昨年の創画展出品の作品「青い硝子の部屋のひとたち」は、現実の都会の重なり合うショーウインドーを実際にスケッチし、それをモンドリアン的に抽象化をすすめたものと思われたが、今回の「硝子の壁」はその発展形。硝子の屈折光を白い背景で透過させながら、鋭くスクラッチされた線の交差で重なる硝子の壁を描き出し、あえて硝子に映る反映を消し去ろうとした意欲作であるが、光が一瞬止まってしまった世界のような雰囲気さえある。白昼夢のように溢れる光にかえって個々の色が奪われていく、そんな世界である。  日本画の世界にモンドリアン的展開を持ち込んだ作家は、かつて一昔前の抽象流行時代をのぞいてはあまり記憶にない。戸田氏は現代と光という空間の表現、それも日本画的白描の世界と関連づけて試行しているように思えるのだがどうであろうか。  自由な発想での制作が許されている創画会に於てもこうしたアプローチは稀であり、非常に興味深く展観したしだいである。更にこの空間処理がどう進んでいくのか期待大だ。   (松)

 

戸田 康一  「硝子の壁」