第43回東方展より

 

高頭 信子

「雷雲」

 第43回東方展より高頭信子さんの「雷雲」をピックアップさせて頂いた。
 高頭さんの作品には宇宙をイメージさせる巨大な牡丹の他、よく富士が登場する。平成16年の「蒼夜」は、深いしじまの富士天空に夜の闇が染み入ってくる様を龍雲の妖しい動きが暗示する作品であったが、近年の花火シリーズにも堂々とした富士を描いた「富士讃歌」がある。
 東京都大田区で生まれた高頭さんは、子供の頃から富士を見て育った。青龍社の時代かも知れぬが、到底描ききれないと思っていたその壮大な富士を、一度描いてから富士の玄妙の虜になってしまったという。様々な様相を呈する富士はある意味存在の象徴としてあるのだろう。自分も含めた森羅万象の象徴なのである。その変化を促すのが雲であり、雲に似せた龍であり、存在を見事に一瞬のうちに具現させる花火である。そう考えると今回の「雷雲」の画裏に潜む作家の心理が微かながら感じられるように思う。沸き立つ黒雲を貫くような稲光、その光に赤くたなびく雲辺、竜神の怒りが世界を席捲する。現代の世相の乱れに対する人間の存在の意義を問う作家の深層表現といえよう。

(松)