パリ・三越エトワール帰国記念

上 村 淳 之 展

東京展 ■ 3月4日〜16日
■ 日本橋三越本店 新館7階ギャラリー
 福岡展 ■ 3月22日〜30日
■ 福岡三越 9階三越ギャラリー
 名古屋展 ■ 4月16日〜21日
■ 名古屋栄三越 7階催物会場

 昨年10月から12月にかけて、パリ・三越エトワールで2ヶ月間にわたり開催された「上村淳之展」の帰国記念展。東京、福岡、名古屋栄の三越での展覧となったが、東京展の会場に伺った。フランス語で「霧と月明りの鳥たち」と銘打った今展は、パリの展覧者に東洋の象徴的空間美を十二分に堪能せしめたものとなったようだ。パリっ子が氏の作品に寄せた心の言葉が、「謙虚」、「穏やかさ」、「やすらぎ」ということからも作品の発する空間観を共有しえたからこその言葉といえよう。
 さて、今回上村氏が自選した38点の作品を見ると、京都市立美術大学専攻科時代(昭和33年、34年)の作品3点があり、他の35点は、その後15年経てから現在までの作品となっている。何故15年の空白をあえてとったかはこの展覧会の趣旨、いわば上村氏の日本画観を示していると言っても良いだろう。この当時は抽象全盛の時代で、多くの日本画家も抽象表現を模索しており、氏もそうした環境下で半抽象の心象表現を試みている。実景の中に意図的形象配置の「春沼」と虚空間の中に梟の実写を融合させたもので、いずれも存在イメージを根幹にもっている。が、現在の、実写を象徴化して同じくリアリティーある象徴空間に融合させるというアプローチを本格的に始めたのが昭和40年終り頃だったからではなかろうか。
 松園、松篁、淳之と三代続く美の創造者として、押しも押されぬ地位にあるが、氏は、卓抜した東洋絵画論を持ち、対象の鳥類の研究家であり、所作を絶え間ない写生で捉える
現場主義である。そんな中で生まれたのが紹介の「雁金」である。ちなみにパリ展中、仏人のベスト1位となった。(松)

 

     雁 金  1988     223×181cm 紙本着色・額装