繊細で清雅な趣
第44回日本南画院展より
今年で数え101歳、まだまだ健筆振りが窺える直原玉
青翁の日本南画院展出品作「淀川原」を紹介させて頂いた。今回は昨年の「清韻」の大胆な筆法と比して繊細で清雅な趣がするが、淀川の風景を参考としながらも、自分自身の心の風景を見事に捉えていると言えよう。
上掲の作品に目を移そう。 左手前から小高い土手に挟まれた堀が見える。恐らく淀川の水量
が増えるとその堀を水が満たすのだと思えるが、大きな岩もむき出されて水路を遮るようにある。盛り上がりの土手の最手前には草も殆どなく、白生地のままである。そうすることで視線は自ずと左中間の木々群へと導かれ、ここを起点として最遠景の霞山へ視点が移動する。そして中央の岩山へ、山下の中景の丘の木々、右手前の林群、そして右下の草叢へと、ちょうど右回転をしながら戻ってくる。そして左下の白生地に落ち着くのである。玉
青翁は恐らく意識していないのではあるまいか。近景から中景、そして遠景と従来の水墨技法をなんなく取り入れ、手前の省略処理はまさしく印象派の手法に似て現代風空間を感じさせてくれる。その感性は運筆の自然体として揺るがない世界を構築している。
昨年も記したが、これはもう境地の世界である。白寿記念展の時に拝見した17歳の頃描いた精緻な「母の像」、それから実に84年間。矢野橋村師により画才を開花させ、柴山全慶老師の禅の教えをうけ摂理を悟り、そして自ら僧籍に入った玉
青翁。俳句もほととぎすの同人として若きころよりその才を認められ、自然を捉える感性は鋭敏である。正に「句・画・禅一致」の世界と言えよう。玉
青翁の更なる御健筆を祈りたい。(松)