歴史を刻む 日本画の輝き
画業55年 日本藝術院会員就任記念
村居正之 作品展


● 8月24日〜30日
● 阪急うめだ本店9 F 阪急うめだギャラリー

 

 日本藝術院会員就任記念の村居正之作品展が、今年8月末、氏の作品のコンセプトに添った照明が施された雰囲気の中、阪急うめだ本店で開催された。今や『太古の文明との時空を繋ぐ歴史のロマンが、氏の描く月あかりの中、星降るギリシャの古代遺跡が聲なき聲で囁きかける群青色の世界に凝縮されている』と、観るものをそんな感覚に導く世界を構築していると言って過言でない。それほど私達の幼い頃見た、そして記憶の深層に残る夜の天空に煌めく月や星、吸い込まれそうな輝き、驚き、憧れ、恐れ。それらをギリシャの遺跡と組み合わせることで、時の流れを秘めた沈黙の美を具現しようと真摯にとりくむ作家魂を感じるからに他ならない。
 村居正之氏は昭和22年、京都で生まれた。小学校2年生で水族館で写生した「アマダイ」の絵が優秀作品に選ばれ東京の会場で展示されたという。以降、絵画の制作、出品の履歴はないが、恐らく幼心に絵に対する思いは静かに沈着していたのであろう。中学卒業後、京都市日吉ヶ丘高校美術工芸コース日本画科に入学していることでも明らかだ。高校で岩絵具による制作を実経験、卒後20歳で「第1回一い っかつ割展」に出品し、次年昭和43年に青塔社に入塾。京展初入選、第13回青塔社展に初出品を果たすも、同年の日展初出品は落選。翌年も続いて落選し、次年は不出品で昭和46年第3回日展で初入選を果たしている。特選受賞は昭和50年、28歳という若さでの受賞である。しかし、その後は順風とはいえず3回の落選を経験し、2度目の特選を受賞したのは15年後の第22回日展、43歳の時であった。そして、この頃を境に以前から温めてきたギリシャをテーマとした制作が始まる。ミコノスの白い建物、教会と対する青い空、群青色の研究が進むのも当然の事。そして、ある時ギリシャ遺跡の夜景の奥深さに遭遇するのである。天啓と言って過言であるまい。夜(月と星)の天空の輝きに浮かぶ歴世の遺跡、「黎明」「輝く」を経て月下のパルテノン神殿を遠望した代表作「宙」が。その6年後、69歳で記念碑となる「月照」が生まれた。子どもの頃からのロマンが静かに滲みる。 (松)  

 

 

月 照  190×190cm  改組新第3回日展 出品作 平成28年
令和2年〈月照〉に対して第76回日本藝術院賞・恩賜賞受賞

ティラの町  225×173cm  第24回日展 出品作 平成4年