第64回春の院展より
日本芸術院会員 清水 達三
「朝」
日本美術院同人の清水達三氏が一昨年の芸術院賞・恩賜賞に続き、2008年度の日本芸術院会員に推挙された。永年親しんだ故郷和歌山の自然への愛情と鋭い洞察が生む、静謐で深い心象性が高く評価されてのことだ。
第64回春の院展に出品された「朝」も郷里の景をモティフにした一点かも知れない。
むら雲の流れる空がようよう朝明けを迎え、黄金色に空を染めはじめた。岸辺の樹立ちも闇から解放され、おぼろから徐々にその姿をあらわにしはじめ、わずかに小波を立てる水面もその影を映しながら黄金色に輝きを増そうとしている。目覚めたしらさぎも今日の晴れを確信して巣を飛び立ってゆく……そんな情景を静かに、しかし確かに一瞬をとらえて印象に深い。
自然の営みへの敬虔な思いが、かくも神聖で崇高な景にするが、それは単に忠実な写実だけから生まれるわけではなかろう。風景を借りながら、永遠にも思える営みの一瞬を切りとり、その一瞬に普遍の生命をこめる、その想いの強さが、この静謐さの奥に潜められているのだ。
(中野)
