― 幽玄な象嵌の美に燻し金を試行 ―
文化功労者

今井 政之 展


京都展 ■10月3日〜9日
■高島屋京都店6階美術画廊
横浜展 ■10月31日〜11月6日
■高島屋横浜店7階美術画廊

 

 昨年、文化功労者の顕彰を受けた今井政之氏の個展が、京都と横浜の高島屋で開催され、盛会となった。
 2年前の傘寿展に続き、今年3月に銀座・和光ホールで沖縄の石垣島の海をテーマとして約100点の作品が並んだが、それに引き続いての個展である。
 今回は今井氏の在住する京都会場で拝見させていただいたが、何と言っても見どころは精緻な絵画文様を際だたせた「面象嵌」。石垣島シリーズ、鳥、花など、自然の中での取材で実デッサンを基にした象嵌絵画の施された大皿、壺、水指、香炉、茶器、瓶子、酒盃など約60点が出品された。
 氏が、世界で最も難題と云われてきた「面象嵌」に取り組み始めたのは、35歳という異例の若さで日展審査員に就任した時からと聞く。これまでも陶芸に象嵌は種々存在するが殆どが線象嵌で、異なった土の収縮率の違いで面象嵌は難しく、当時まで未完成の領域だった。氏は象嵌土と本体の収縮率を合わせる工夫を重ね、恐らく気の遠くなるようなテストを繰り返している。面象嵌の焼成に成功したのは昭和44年である。その後も更に研究を重ね、塩釜による象嵌表面の切れの良さを実現。更に収縮率の高い備前の赤土にも果敢に挑戦、登り窯による窯変を加味した作品も送り出している。
そして、今回も初めての試みの作品に遭遇した。「金」の試行である。「象嵌志野瑞祥 小鉢揃え」の松に施された鮮やかな釉裏金彩と、掲載の「象嵌彩窯変 海神大皿」の大蛸の頭に施された燻し金である。一見異質に見えたが、見続けるうちに迫力が増してくる。「象嵌という土と土のハーモニーの中で私の感性と思いをいかに表現するかという目標に向かい日々試行錯誤を繰り返しております。神秘的な炎とともに生まれ出るやきものは私の憧れであり、自然との対話の中で生命の尊さと生きる喜びを感じつつも、なおも果てしない奥の深さと限りなき道を痛感しながら、魂の入った作品を創るべく精進しております。」とは氏の作陶理念。文化功労者に顕彰された今も、常に前向きに挑み続ける作家魂を見た。(松)

 


 

象嵌彩窯変 海神 大皿