平成30年度文化勲章受章
今井 政之
平成30年度の文化勲章、文化功労者が10月26日に発表された。その中、文化勲章受章の陶芸家・今井政之氏と文化功労者顕彰の書家・井茂圭洞氏の改組
新 第5回日展出品作を紹介し、その快挙を祝したい。
今井政之氏の受章事由は、「技術的に難しいとされる象嵌技法を広い面に展開する面象嵌に発展させ、陶芸に新しい可能性を切り開いた」とある。
今井政之氏は、昭和5年大阪の生まれ。備前市伊部で陶技の4年の修業を経て、昭和27年に京都に移り、初代勝尾青龍洞の門を叩き楠部彌弌に師事した。余程の才があったのであろう、同年の第9回日展に23歳で初入選。以降レリーフに工夫を重ね昭和34年、29歳で日展特選・北斗賞を受賞、昭和38年に再特選するも、創作に没頭した。試行を何度も重ね、その中生まれたのが大地に苔むすような、モスグリーンの苔泥彩である。翌年35歳という異例の若さで日展審査員に就任。しかし、今井氏の創作への熱意はここから真骨頂をみせる。面象嵌への挑戦である。これまでも陶芸に象嵌は種々存在するが殆どが線象嵌で、異なった土の収縮率の違いで面象嵌は難しく、当時まで未完成の領域だった。氏は象嵌土と本体の収縮率を合わせる工夫を重ね、恐らく気の遠くなるような試行を繰り返している。面象嵌の焼成に成功したのは昭和44年である。
その後も更に研究を重ね、色彩の発色、金とのコラボと試行と新分野に挑戦、文化功労者顕彰以降も研究に邁進した。
一方、文化功労者顕彰の井茂圭洞(本名:雅吉)氏の事由は「斬新な『散らし書き』が、伝統美の品格と現代の造形感覚を兼ね備え、高く評価」と簡略に記されていた。
氏は昭和11年兵庫県に生まれた。高校在学中、恩師となる深山龍洞氏に邂逅し、氏の真摯な生き方に感銘を受けて書の道に進むことを決断する。師の創設した一東書道会に所属し、京都学芸大学美術科(書)卒業。その年に日展初入選を果たしている。漢字は王羲之を中心に多くの古典を、かなは三筆・三跡をはじめ、平安古筆の全てを渉猟。そして深山師の生き様から矛盾抵抗の美と要白の重要性を看取して独創性豊かな書風の基盤を確立した。平成15年に日本藝術院賞、同24年には日本藝術院会員に推挙された。また、日本の書をユネスコの無形文化遺産に登録する活動の中心として尽力している。高所から書壇の健全性を見守り、多様性を持った書藝術の発展に今後も邁進していただきたいと思う。
(松原)
