日本芸術院会員
(社)日本新工芸家連盟会長展
第29回日本新工芸展が、国立新美術館での初工芸展となったが、これまでの百貨店での展示とくらべ非常にすっきり見えた。そう感じたのは筆者だけではあるまい。「空間も広く、立体作品展示台も低くとっているので立体作品越しに染色などの壁面作品が充分に展覧できる。そして穴開きでない白い壁に色彩が鮮やかに映える。」とは、先日インタビューさせて頂いた折りの河合誓徳会長の言。
河合誓徳氏は新工芸結成に総務委員として参加。その年の日展で会員賞を受賞し、翌年には日展評議員に就任している。いわば一番脂の乗った時期に新団体の中核として牽引的な役割を果たしており、着実に日展工芸家としての地位を確立していく。また、陶筥が氏の代名詞となっていくのもこの頃である。多角形、小丘形、楕円形、方形と蓋合わせのしっかりとした様々な陶筥の器様に上絵が描かれ、その上絵に面での釉裏紅を施すなど難度の高い技術をみせている。中でも昭和63年のオーストラリア展出品の八角陶筥「釉裏紅 富貴」は傑作であった。上絵は植物が多かったが、すでにこの頃から風景を取り込みはじめている。そして翌年の第21回日展に「行雲」で内閣総理大臣賞を受賞、平成9年に奇しくも同題の「行雲」で日本芸術院賞を受賞。平成14年帖佐会長の逝去後に会長に就任、平成17年日本芸術院会員に昇りつめた。
近年、河合氏の陶筥には郷愁誘う田舎の風景が描かれている。その風景は氏の故郷大分の国東半島と聞く。今作「春を待つ」も小高い丘から俯瞰した故郷の長閑な風景(心象的に昇華した)が描かれていると思われる。用を兼ねた日本の情緒美がある。
(松)