イメージを染める
日本藝術院会員
中井貞次の世界


● 1月18日〜2月17日
● 京都市 染・清流館

 

 アートインタビューで染織家・中井貞次氏の自宅を訪問したのは平成18年5月。若葉萌える頃、奥様とお二人でにこやかにお話いただいた。その時、初めて染色の奥深さに接したといえる。当時、中井氏は平成2年に「巨木積雪(上掲作)」で文部大臣賞を受賞、平成5年「原生雨林」で日本藝術院賞を受賞、日展理事に就任され正に染色分野の重鎮のひとりとして活躍されていた。訪問の2年後、日本藝術院会員に就任されたのも、実直な制作姿勢が生んだ自然の流れであったと思われる。
 この世界に入ったきっかけは「学校の勉強より幼い頃からいろんなものを見て歩いたり、絵や工作したりする事が好きな子供でした。」そんな感性豊かな先生をみていたお兄さんの薦めで京都市立美術大学工芸科に入学。蝋染めの小合友之助先生に魅せられ、染色の世界に足を踏み入れたとお聞きしている。日展初入選は昭和28年、21歳であった。自分の表現の追求に踏み込んだのは29歳の頃、中東(ペルシャ)、ギリシャ、インドへの1年間の自費調査旅行。その後41歳で文化庁在外研究員として1年間の滞欧美術研修。その二つの大旅行研修が中井氏の作品の骨格を作ったといって良いだろう。二度の海外研修後にそれぞれ日展特選を受賞している事実がそれを証明する。中井氏の作品は必ず原点のスケッチが存在する。夢想の中での虚の世界でなく、現地を訪問してスケッチを残し、その印象を心に沈めて熟成させたイメージを蝋染めの浸染技法などの技術と融合させて作品とするのである。
 残念ながら筆者は、纏まった一連の中井氏の作品に接する機会がこれまでなかった。代表的な氏の大作40余点に囲まれて、印刷や写真と違う実際に接してわかる染色、色彩の妙味、また氏の辿ってきた美意識の旅とイメージの世界の無限さ、日本の藍染めの深さと味わいを改めて知ることが出来た。意気軒昂の87歳、今後益々のご活躍を祈念したいと思う。(松原)

 

 

巨木積雪 1990年(平成2年) 172×172 麻 二曲屏風
第22回日展(文部大臣賞) (京都府蔵〈京都文化博物館管理〉

「ECOLOGY」
 1995年(平成7年) 各172×172 
麻 二曲屏風五雙の前で