今月の課題 「ロシアのウクライナ侵攻」 編集主幹 松原 清
先月号で心配していた事態が現実となった。ロシアのウクライナ侵攻である。北京オリンピックが閉幕した僅か4日後、ロシアのプーチン大統領が、2月24日午前6時、テレビ演説で、「ドネツク人民共和国」と「ルガンスク人民共和国」の要請に応じ、特別軍事活動を行うと宣言、多方向からロシア軍の地上部隊が侵攻し、同時に首都キエフ、ハリコフなどの空港、通信施設、地対空ミサイル施設がロシア軍のミサイルによって破壊された。ベラルーシ側の北部からは戦車が侵攻し、首都キエフ近郊には空挺部隊が降下した。当初、プーチン大統領は3日から遅くても一週間以内にウクライナを制圧し、ロシア主導の新政権を誕生させる腹づもりであったようだが、国際法を乱用する「ネオ・ブレジネフ・ドクトリン」…ロシアの承認する「ドネツク人民共和国」と「ルガンスク人民共和国」(共にウクライナ領内)の集団的自衛権を行使するという理由での侵攻であった。ウクライナはNATO に所属していない。嘗て、ウクライナが絶対的経済危機に陥った時、アメリカとロシアが支援の条件として、戦争的危機に陥った場合に武力支援する約束のもと、完全な核廃棄を実施している。NATO 加盟も断念したが、それが全て反古にされているのだ。もし、ウクライナが核廃棄しなかったら、又は、NATO 加盟が実現していたらロシアの侵攻は恐らくなかったであろう。平和主義の限界が如実に現れた例だ。日本の外交、国防を省みた時、不安感が過るのは私だけではあるまい。まして、今はパラリンピック開催中である。昨年12月にロシアを含む173カ国が共同で提案し、国連で採択された「五輪休戦決議」は守られなかった。原子力発電所の占拠というテロ行為も辞さぬロシア、以前からもそうだが、今や国連は否決権を持つ常任理事国の独断で制御力が全く機能しない機関になりさがってしまった。中国に忖度した国際パラリンピック委員会は、当初ロシアとベラルーシの選手について、個人資格となる「中立」の立場での出場を認めたが、国際世論に押され、翌3月3日に撤回・除外に追い込まれたことも茶番だ。
それにしても、ウクライナ国民の祖国愛をひしひしと感じる。海外居住者が国の非常事態に感応して国、家族を思い戦いに加わる為にぞくぞくと帰国。その数6万人を越えるとか。まだまだ予断を許さないが、国際包囲網は経済的にロシアを締め上げつつある。中でも日米欧の主要国が国際的な資金決済ネットワーク「スイフト(SWIFT)」からロシアの大手銀行排除を決めたことは衝撃的。それら世界の動き、日本、台湾の動きをじっと見守る不気味な国を忘れてはならない。
全日本美術『今月の課題』の
1996~2005年を単行本に
全日本美術編集主幹 松原清 著
A5版 272頁 定価2000円