今月の課題 「釣りの醍醐味(1)」 編集主幹 松原 清
この夏の熱暑と台風の異常さは格別であったが、そんな中、長い間忘れていた釣りの面白さを思い出させてくれた。たかが郷里の近くの岸壁でのアジ釣りであったが、夏休みに帰郷した孫達に釣りの楽しさを教えたいと思い、朝はやく用意をして出かけたのだが、「あまり釣れないだろう」という予想に反して60匹を超す大漁。孫達といえば、それはもう大満足の様子。2時間ほどで帰るつもりが、もう少し、もう少しで4時間あまり。気がつけば10時過ぎで、顔、腕が日焼けで真っ赤になっていた。なんのことはない、孫達にかこつけて私が楽しんでいたのだ。
その後も、二度ほど母(90歳)の機嫌窺いに一泊で帰省したが、その度に2時間ほど岸壁へ。鰯が300匹以上釣れて処置に困り近所に配った。もう一回は前から試してみたいと思っていたことにチャレンジ。実はアジがバナナの皮でよく釣れるということをネットのユーチューブで見ていたので、この岸壁でトライしたのだが…。全く無反応、一度のあたりさえなかった。隣で釣っていた人はオキアミのサビキでアジをゲットしていたので、あまりのエサの違いに見向きもされなかったのだろうか? そう言えばトウモロコシの実でチヌを釣ったという話もよく聞いた。
昔(小学校の頃)は、手長エビのむき身でよくアジ釣りに行った。家の前に一反ほどの畑があり、その前に幅30メートルくらいの川が流れていた。海の近くなので汽水である。川渕は葦がはえ、澄んだ砂地にしじみが採れ、手長エビがたくさんいた。テグスの小網でエビの尻尾の方からふせるとエビが飛び込んでくる。半時間ほどで20数匹を獲って、3匹くらいをエサにして夕方の地合に釣りに出かけるのだ。昔はサビキのような便利なものはなかった為大概は二本針にイソメかむきエビをエサに浮きづりでアジを釣ったのである。20センチくらいのアジ10匹程と手長エビで十分に夕食のおかずになった。汽水の川は面白く、川の中央部の深みにはアサリがいてよく採れた。魚もキビレ(チヌと同じ魚体で腹びれが黄色い)がよく釣れた。近くの海の砂浜にあけられた穴をスコップで掘って小さなカニを捕まえ、それをエサに夜釣りをするのだ。カニの腹が光るので僕たちは「夜光ガニ」と呼んでいた。川に架かる土橋の桁に恐る恐る降りて座り、竿を出す。見上げると満天の星。そんな再現をしてみたいが、今は川も汚れ、川幅も埋め立てられて狭くなり、夢また夢の世界になった。
中学に入り、クラブにも所属し、釣りの世界が徐々に遠のいて行く。再び釣りが身近になってくるのは就職後から。親父が釣りに嵌ってからとなる。 (つづく)
全日本美術『今月の課題』の
1996~2005年を単行本に
全日本美術編集主幹 松原清 著
A5版 272頁 定価2000円