今月の課題 「6月に想う」 編集主幹 松原 清
早いもので、もう6月の声を聞く。5月号からこの7月号にかけて連続3回、ヤマザキ ムツミさんに「地中海を巡る旅」を執筆いただいた。彼女には平成28年10月号で「瀬戸内国際芸術祭2016」の取材紀行を一度紹介していただいている。頂いたプロフィールは『1981年生まれ。埼玉県出身。約10年の東京暮らしを経て、現在京都在住。フリーの編集・ライターとしてアート、映画、旅、街のジャンルを主に活動を続けている。』とある。40歳を前にしてかなりの書き手、思考も周囲に及び新鮮。だが、一度の訪問では計り知れない深さがある国や人の歴史。幾度かの訪問でその歴史を読み解いた、更なる深化を遂げた紀行文を期待したいし、そうなる才能をはらんでいる人だと思う。
さて、悲しい報告がひとつ。月刊『書道』編集長の麻生泰久氏(80歳)が、5月16日、急性心筋梗塞のため急逝された。麻生氏は美術評論家協会所属の書の評論家。協会では筆者の大先輩である。評論歴60年は田宮文平氏に次ぐ書道界の生き字引であり、本当に大切な人を失った思いでいっぱいである。年毎の総会での団欒、協会の春の旅行では中国の旅順、台北の故宮博物院にも同行、愛媛の道後温泉で河東碧梧桐についての蘊蓄を聞き、一昨年には北海道にご一緒させていただき美術館を巡った。お酒をこよなく愛し、書ばかりか絵画や社会問題にも造詣が深く、ウイットの効いた軽い毒舌が麻生氏の持ち味であった。慎んで哀悼の意を表したい。
一方、急病で入院加療を余儀なくされ、2年間あまり活動を停止していた田宮文平氏が先端医療で回復に向かっている。徐々に展覧会取材、講演などに顔を見せており、まだ、月に1週間ほどの検査・療養が続いているとのことだが、書道界にとっては朗報である。弊紙連載の「名書巡礼」も2016年新年号(21)話で休載となっているが、体調が戻れば復載いただける旨ご了解を頂いている。
以前、雨の時期もまたいい。と記したことがあるが、いよいよ入梅である。何もせず、好きな読書を楽しめれば雨も最高だが、強雨の中重い荷物を持っての取材は年々厳しくなってきた。今年の梅雨は早く明けるのであろうか。明ければすぐに熱暑の夏となる。結局、体を鍛えなおすしか方法がないのかも。
目を国外に移せば、米朝トップ会談が6月12日に行われる。スムーズな非核化は確約できるか、まだ、北朝鮮は何も約束していないのだ。完全な核、バイオ弾頭の廃棄が絶対条件だ。また、拉致被害者は確実に戻ってくるのか。国として非常に大切な時、モリーカケ問題に終止する野党の追及、国会の空転。その姿勢に首を傾げざるをえない。
全日本美術『今月の課題』の
1996~2005年を単行本に
全日本美術編集主幹 松原清 著
A5版 272頁 定価2000円