今月の課題 「断 捨 離」 編集主幹 松原 清
寒暖の差が激しく、豪雪と異常な気温上昇の波で、穏やかな春は遠く昔になったような日本列島であった。やっと新緑の目映い一時の気候にほっとした気分に浸っているが、1ヶ月も経ずに熱暑へと様変わりをみせるのではないか、春も秋も一時に過ぎて余韻もない。日本の亜熱帯化は着実に進んでいるようだ。
全美も神戸に本拠を移し、33年目に入ったが、神戸駅付近から三宮の現在の場所に事務所を移してからこの12月で丸9年となる。32年間の資料(当初の資料は大半が、阪神淡路大震災で水を被り廃棄の憂き目を見た)、データは膨大で、マンションの部屋の一室の倉庫では到底管理できなく、自宅に持ち帰り、その自宅もオーバーフローして、徳島の実家に放り込むのが年毎の行事になっている。40歳台には図録、目録などすべてとって置こう、年取ったらテーマを決めて自分なりの追想記を書く為にノなんて思っていたのだが、膨大に積み重なった実家の本の山を見るたび、果たして書く時間があるのか?それより整理はどうする?、など70歳に数年という今に至って、このまま無闇にストックすることに疑問が生じてきたのである。
そんな折、そろそろ「断捨離」したら、と妻からの一言。えっ!「断捨離」って何?!不覚ながら私はその言葉と意味を知らなかった。「いらないものを捨てて身軽になることよ」との有り難い講釈を聞くが、実は彼女も全美の仕事を手伝う忙しさの中で、その資料整理をどう解決するかに腐心していたのである。
「断捨離」は、「もったいない」という固定観念に凝り固まってしまった心を、ヨーガの行法である断業、捨行、離業を応用し、「(1)入ってくるいらない物を断つ。(2)家にずっとあるいらない物を捨てる。(3)物への執着から離れる」ことで、自分自身で作り出している重荷からの解放を図り、身軽で快適な生活と新たな人生を手に入れることが目的。単なる片付けとは一線をひく。自分と物との関係だけでなく仕事と人間関係にまでその考えを応用する書物も出ているとか。2010年の流行語にも選ばれたとのことだが、私の記憶の範疇になかったことは確か。年々たまる美術新聞の余剰分、ストックも見る見るうちに山となる。その他の図録などの資料も同じ。ストック管理の甘さを今更に実感。遅まきながら将来指向をちゃんと考えながら、「断捨離」を実践すべきと思うに至った。因みに私の仕事も「断捨離」の必要性がある。余裕のない仕事はただマンネリを生む。どこで気持ちの余裕をとるか!催しの少ない9月号(8月10日発行)を休み、内容を濃くした9月、10月の合併号(9月10日発行)を考えている。
全日本美術『今月の課題』の
1996~2005年を単行本に
全日本美術編集主幹 松原清 著
A5版 272頁 定価2000円