今月の課題 2016年を振り返って 編集主幹 松原 清
使い古された言葉だが、「光陰矢のごとし」とは師走にぴったりの言葉である。毎月、締め切りのある仕事に関わっていると時間があっという間に過ぎ去ってしまい、気がつくと数える程の余日で新年を迎える。新年号編集に掛かり切り状態となり、いつも気にしている「今年の漢字」のチェックを忘れていた。12月12日にその発表があり、今年は「金」が1位となったようだ。今回をいれて「金」は3度目だというが、調べてみると2000年のシドニー五輪、2012 年のロンドン五輪の年に1位となっており、金メダルの獲得数に起因するのかと思ったが、2004年アテネでは16個の金メダル(最高数)を獲得しているが、この年は記録的な災害が続発して「災」となっている。因にシドニー5個、ロンドン7個の金であるが、恐らく話題性が大きかったからだろう。私的には2位の「選」がイメージにフィットする。
さて、振り返ってみるととてつもない災害もあった。4月14日の熊本大震災である。震度7~6の激震が繰り返し発生、それが離れた地域まで誘発させた。死者157人、負傷者2337人、被害総額は約4.6兆円にのぼると聞く。弊紙でも長年の交誼をいただいている白鷗書道会や書関連作家もいて、随分心配したが、半年過ぎてやっと落着きを取り戻したようで、全美が被災した阪神大震災のころを改めて思いだした。被災された方々の1日も早い復興と心のケアを祈念したい。
政治的には、国内では舛添辞任にともなう小池百合子東京都知事の誕生がビッグニュース。ガラス張りの政治を公言して、築地移転問題と東京五輪問題を再検証する姿勢に日本国民の注目度はうなぎ登り。利権がらみの政治に切り込んで欲しいと思う人は、有権者の殆どの人達だ。海外では、もちろんどんでん返しで大統領選を勝利したドナルド・トランプ氏が1番のニュース。今後の日米問題、その政策が及ぼす世界の変化が心配だが、これは個人的意志では如何ともしがたい。イエス、ノーを明確にする国際政治感覚を安部内閣がしっかり持ちえているかが鍵となることだけは確かだ。尖閣問題に北方領土問題も絡んでくるからだ。中国の脅威も相変わらず続いており、ロシア・プーチン大統領のしたたかさにどう対処していくか、アメリカとその連携が巧くとれるか予断を許さない。
一方、美術的な話題として、かの若冲が憧れたという「鶴亭」という異才を初めて知った。大阪市立美術館で開催された「王羲之から空海へ」も、古典、古筆の本物に接し得た有意義な企画展であった。7月の土橋靖子書展、8月の髙木聖雨書展、9月の赤平泰処書展と充実した大個展も記憶に新しい。が、新年からディレクターの一人として参加させていただいた11月の中村雲龍書展は筆者個人の貴重な経験となった。神戸全美創立以来お世話になってきた恩地春洋氏との永遠の別れもあった。旅は6月の石垣島が楽しい記憶に残る。
来る年が皆さまにとって実りある年となりますよう祈念申しあげます。
全日本美術『今月の課題』の
1996~2005年を単行本に
全日本美術編集主幹 松原清 著
A5版 272頁 定価2000円