今月の課題 「美術館での写真撮影の是非」 編集主幹 松原 清
今年2月、24年振りでフィレンツェを訪れたが、ウッフィツィ美術館、アカデミア美術館、サン・マルコ美術館、パラティーナ美術館、ドゥオーモ(サンタ・マリア・デル・フィオーレ大聖堂・クーポラ)内部など殆どの美術館・修道院・教会内部の美術作品のカメラ撮影が禁止になっていた。以前はノーフラッシュなら自由に撮れたのだが、平気でフラッシュをたいて撮るヤカラが多くなったことも事実で、作品の前で記念写真よろしく、場所を占有している若者たち、団体さんもいて観賞どころでなくなる。近年特に目立つ観賞マナーの欠如は如何ともしがたい。美術館の売店で販売している画集やブロマイドの売り上げが下るといった理由もあったのかもしれない。しかし、ブロマイドや画集に収録されている作品は有名なものが殆どで「いいな!」と思ったマイナーな作品は全くと言うほど収録されていない。
今回、ウッフィツィ美術館がすっかり改装・展示替えされ、ボッティチェリと師匠のフィリッポ・リッピの作品群が隣りあった部屋に展示されていたのには感動したが、影響具合を見るために本当はリッピの作品を撮っておきたかった。時とともに記憶が薄れるからだ。
また、フィレンツェからの帰りにパリに寄ったが、なんとオルセー美術館が撮影禁止となっており、大ショック。帰国して調べるとどうやら2010年の6月かららしい。美術館が禁止した主な原因は、お構いなしの自動フラッシュ撮影(主に中国人観光客。私も随分現地で見ました)に加え、昨今カメラ以外でも携帯電話などで美術館内を撮影する人が増え、鑑賞の妨げになることが大きな問題となっているためだという。しかし、この措置に美術館監視員の組合が反発しているらしい。理由は、美術館は公共の場であり、税金が作品購入に充てられているということに加えて、来館者が払う入場料収入のうちの20%が新しい作品の購入予算に組み入れられているため、来館者各人は共同所有者だと解釈できるというのだ。
で、ルーブルはどうか。現在ルーブルはノーフラッシュならば撮影可である。実は、ルーブルも2005年の秋に混みあっている場所に限って撮影禁止を実施していた。が、禁止を知らないか無視して写真を撮る来館者との追いかけっこに監視員は対応できなくなって数か月間でなし崩しになってしまった経緯がある。
結局、2月の旅行で作品写真が撮れたのはルーブルとモンマルトル博物館。無念の気持ちで帰国したことを今更に思いだすが、フィレンツェの項目に関するインターネットの書き込みによると、どうやら2002年頃からのようで約12年間ほど禁止措置が続いていて、せっかくなのに残念だったという書き込みが殆どであった。
インターネットの「残念」の書き込みは日本だけでない。ある意味マイナスの宣伝効果に繋がるとみたのだろうか、フィレンツェの美術館のカメラ撮影禁止が6月7日に就任した文化大臣の一声で突然解除となった。その理由は不明である。
全日本美術『今月の課題』の
1996~2005年を単行本に
全日本美術編集主幹 松原清 著
A5版 272頁 定価2000円