今月の課題 「24 年振りのフィレンツェ…そしてパリ」(4) 編集主幹 松原 清
これまで、二度訪れているフィレンツェだが、ジョットの鐘楼に一度も登ったことがない。同行のS氏曰く「今、フィレンツェ観光の一押しのお勧めが、ジョットとドゥオーモの二ヶ所登頂ですよ」と促される。彼は、趣味が登山であり、私とM氏は運動不足、フィレンツェカードも使用できるし、女性二人に確認すると挑戦しようということで衆議一致して登り始めたのだが、回廊の石階段は人ひとりがやっと通れる幅。閉館前の駆け込み観光客が後ろから続々と詰めかけていて休むことも侭ならない。足がプルプルなりかけて、「ヤバイ」と思った所が第一展望所であった。爽やかな風が吹き抜けて街の全貌が見渡せる。城塞からの眺めを見れなかった思いひとしおか、S氏は更に上へ。我々は十二分に満喫した。
翌朝5時過ぎに、画家のT氏は展覧会の審査に間に合わすべく一足先に帰国。予約を入れていた空港へのタクシーが時間になっても来ないのでイライラしたが、ホテルマンは「ノンプロブレム」の一言。イタリア時間はまだまだ健在であった。この日はフィレンツェ最終日である。旅行前、修道院でオペラを上演している情報があり、予約を入れるか迷ったが、そうすべきであったと少し後悔した。以前、スペインでアルゼンチンタンゴを現地のプレイガイドで簡単に入手できた経験があるので、高を括っていたことが裏目に出て、全く入手不能。上演日も限定のため現地の人も手に入れにくいのだと知った。
で、我々は、ミサのためいまだ入場していないドゥオーモへと向かった。こうなればドゥオーモの最高峰クーポラに登り、二ヶ所を制覇しようと。ここの入場はフィレンツェカードの直接使用はできなくなっていて、別途チケットを取得する必要がある。入り口で拒否されて初めて分かったことだが、これも旅の醍醐味か。ドゥオーモの正式名は、サンタ・マリア・デル・フィオーレ(花の聖母)大聖堂。イタリアにおける晩期ゴシック建築および初期ルネサンス建築を代表するもので、フィレンツェのシンボルとなっており、ルネサンスを代表する芸術家が何らかの関わりをもっている、いわば芸術の結集した遺産といえる。クーポラの天頂までの高さ107メートルは、建設当時世界最大、人が登れる天蓋部までは55メートルある。階段は464段。約20分はかかる。やがて内天蓋の旧約聖書を題材にした天井画「最後の審判」が迫りくる。ヴァザリーをはじめ多くの画家が関わった傑作である。見晴らし台にたどり着くと、真横にジョットの鐘楼が見える。確かにこちらの方が高い。朝陽にピンクと薄緑、白の大理石が映えて本当に美しい。登る途中で分かったことだが、内部は大彫刻群の補修がなされていて人がいなかった。ミサが理由だけで入場出来なかったと思ったのは違っていたのである。ガイドには、間違いや書かれていないことが多い。信用過多は要注意だ。
この後、最終日ということで土産品あさりを兼ねて、フィレンツェを代表する革工房へ。 次回最終回。
全日本美術『今月の課題』の
1996~2005年を単行本に
全日本美術編集主幹 松原清 著
A5版 272頁 定価2000円